自己血管(AVF):自己血管使用皮下動静脈瘻

自己血管使用皮下動静脈瘻について

AVF:ArterioVenous-Fistula
(一般的に「自己血管内シャント」と呼ばれます)

血液透析に必要な血流を容易に得るために,動脈と静脈を皮下吻合し,静脈に直接血流を灌流させる方法。
=そうすることで,容易に十分量の血液を容易にアクセスして確保できる。

 


選択する動静脈によって吻合方法は異なり,吻合方法に利点と欠点があります。

  側々吻合 側端吻合 端々吻合
利点 ・閉塞しにくい
・手術が容易
・末梢への血流が維持できる
・ソアサム症候群になりにくい。
・吻合口の調節が容易
・末梢への血流が維持できる
・過剰血流が起こりにくい
・スチール症候群になりにくい
欠点 ・ソアサム症候群になりやすい ・スチール症候群になることがある ・吻合口の調節が困難
・末梢循環障害を来す危険がある

<補足>

端々吻合と側端吻合の両方は,末梢への動脈血流が維持できるのが特徴ですが,側々吻合はかえって,高圧の動脈が静脈の末梢へ流れてしまうことがあります。(ソアサム症候群)=中枢側の静脈が閉塞した場合,高率にソアサムになる。

しかし,吻合では,片方の静脈を結紮するので,末梢側の静脈圧上昇(ソアサム症候群)を起こしにくいという特徴になります。

 


< 理想的な条件 >
  • 穿刺が容易
  • 十分な血流量が得られる
  • 再循環を起こしにくい
  • 止血が容易
  • 心臓への負担少ない
  • 日常生活に支障を来しにくい
  • 合併症が少ない
  • 長期間使用できる…..等

 


< 管理 >
  • シャントの成熟には,少なくとも1ヶ月は必要といわれ,また十分なシャント発達には6ヶ月も必要となります。(十分な血流を得るには血管が4mmまで発達している必要があります。)

発達前に穿刺すると血管壁への浸潤や血管壁を圧縮させて,内シャントの機能を失う可能性があります。初めて増設したシャントで透析を行うときは慎重に行う必要があります。特に発達前での穿刺失敗は血管荒廃を招き完全な機能停止を起こすことがありますので特に注意が必要となります。

血管の発達が弱い理由の例としては動脈側の血流不足,もしくは吻合部での支障が考えられます。6週以上経ってもシャント血流の増加がみられない場合は造影での再評価を検討したほうがよいでしょう。


< 人工血管(AVG:arteriovenous graft)より自己血管の方がよいのか。 >
  • 狭窄や閉塞が起こりにくい

人工血管は,一定の割合で静脈内部または人工血管と静脈吻合部で狭窄や閉塞が認められます。これはダイアライザ内で活性化された血液が流れることで生じると考えられていますが,使用していない人工血管でも狭窄は起こります。

  • 感染の発症率が低い

人工物を使用しないため,感染の発症率が低い