透析液の歴史について

透析液の歴史は??

 アメリカのAbel氏により1912年に最初の血液透析のウサギを用いた動物実験が行われており,この時の実験で使われていた透析液は『0.6%の食塩水』でした。

 その後,血液透析に使用する透析液は,生理食塩水やリンゲル液が使用されていましたが,1947年のKolff氏がアルカリ化剤に重炭酸を用いた透析液専用の透析液を発表したことで,透析液の開発が大きく変わったとされています。

 1964年Mion氏らが炭酸カルシウム析出を改善するためにアルカリ化剤に酢酸を用いた透析液を考案したりします。ですが,1980年代になると,ダイアライザの高性能化により酢酸不耐症が血液透析治療時に問題視されるようになり,再度,重炭酸透析液が検討されるようになります。
現在の使用している透析供給装置にたどりつくまでの開発に大きな影響を及ぼしたのはアルカリ化剤といえます。

 酢酸から重炭酸透析液に移行するに至っては,カルシウム沈着を押さえるために,透析液が停滞しないようにシングルパス方式と呼ばれる連続供給が採用されるようになりました。その工夫は,混合方法や加温なども考慮され,今日の透析液供給装置の出来が確立し安定した維持透析が可能となったといわれます。

ベッドサイドにある透析監視装置に除水制御機能が追加されるようになり,今では透析機器のコンピュータ技術の屈指より,より精度の高い透析治療が可能となっています。

透析液の発達は,透析治療の向上に必要不可欠だったといえますね。

透析液に求められる条件とは??

透析液は半透膜を介した透析で患者の体液の異常を十分に是正し,副作用が出ないようしなくてはなりません。そのため,次の条件を満たしている必要があります。

  • (1)生体から除去したい物質を十分に除去することができる。
  • (2)生体内に不足している物質を補うことができる。
  • (3)生体内に必要な物質を除去しない。
  • (4)生体内に有害な物質を含まない。

現在市販されている主な透析液の組成は,

・ ナトリウム 135~143mEq/L,
・ カリウム 2.0~2.5mEq/L,
・ カルシウム 2.5~3.75mEq/L,
・ アルカリ化剤 33~38mEq/L,
・ 塩素 105~114mEq/L,
・ ブドウ糖 0~200mg/dL

の範囲内とされていますが,実際の治療では患者の状態や透析治療の条件によって透析液組成の変更が必要となります。