低分子ヘパリンについて

低分子ヘパリン

(LMWH:Low molecular weight heparin)

 

平均分子量:4,000~6,000
半減期:2~3時間(ヘパリン作用時間の2倍)
作用機序: 凝固因子Ⅹa,ⅩⅡaとカリクレインを抑制(トロンビンと凝固因子ⅨとⅪはほとんど抑制しない。)
測定:Xa活性化凝固時間(XaCT)

 

〔追記〕低分子量ヘパリン(LMWH)はヘパリン(粗ヘパリン2,000~25,000)を分画(化学的分解か振り分けにより分画)し,基本骨格は同一でありながら分子量4,000~6,000と低分子化したヘパリン製剤。

 

 


利点
  • ヘパリンよりも出血の助長の危険性が低い
  • 高トロンビン作用が弱い
  • 血小板凝集がほとんどない
  • 作用時間が長いため単回投与が可能
  • 〔報告例〕脂質代謝の改善と高カリウム血症の改善

 


問題点

・モニタ法がベッドサイドモニタとしてやや適していない

低分子ヘパリンは抗Ⅱa作用が弱いことから,「Lee-White法」,「ACT法」のモニタ法では凝固時間の延長がモニタとして適していない。又,抗Xa活性を測定する方法が,あまり普及していないなどの理由もある。

 

・アレルギー反応

現在使用されているヘパリンは哺乳類動物からの抽出物であるために,頻度は低いが使用している患者の中にはじんま疹,鼻閉,喘鳴などのアレルギー反応やアナフィラキシー反応が出現することがある。
※これは非分画ヘパリン同様,低分子ヘパリンでも報告されている。

 

・抗Xa因子活性の時間が長い

抗Xa因子活性は投与後は比較的短い時間でピークを迎えるが,活性自体は10時間を超えることもある。血中濃度の上昇は出血の危険が増える。

 

※ヘパリン同様,アレルギー反応による掻痒や過敏症などの症状がみられることがある。

 

 


注意する点
  • アスピリン,ジピリダモール等の血小板凝集抑制作用を有する薬剤の併用は出血合併症がみられた。
  • ヘパリンと比較して中和薬であるプロタミンとの結合能力が弱い(約60%程度といわれている)。

 

プロタミンについて補足

未分画ヘパリンの中和薬として使用されますが,ヘパリンが投与されていない状態でのプロタミンの投与は抗凝固作用を示します。特に中和後のヘパリンでのリバウンドに注意する必要があります。

プロタミンは,ヘパリンとイオン結合することで安定複合体を形成し抗凝固活性を失わせます。